1次ピックアップ
1次ピックアップが始まる頃、会場中はそわそわしていた。
俺たちはこの日のために1年間待ってたんだ!
そう言わんばかりの緊張感に包まれていた。
そして、BGMと共に司会の角田信朗氏が
エントリーNo.〇〇、□□!!
次々と選手の名前を読み上げていく。
エントリーナンバー6番、川崎一輝!!
人間離れした重量級の肉体に度肝を抜かれた観衆がコロナ禍にも関わらず「オオオォー!!」と驚愕の声を上げる。
そしてまた間髪入れずに各都道府県の代表たちがコールされていく。
エントリーナンバー17番、井上ラビッチョ裕章!!
クレバスのような深いカットが会場を一段とゾワゾワさせた。
各地方やブロック大会はもちろん、全国レベルの関門をくぐりぬけた王者たちが集うのだ。
そして前半グループが規定4ポーズを取った後、後半のグループが登壇してくる。
エントリーナンバー21番、杉中一輝!!
エントリーナンバー23番、喜納穂高!!
今大会の目玉の2人の登場である。
この若き2人が後に歴史を揺るがすこととなる。
2次ピックアップ
2次ピックアップが始まるとカメラを構える観客の数も増える。
ファイナリストの登場である。
高梨圭介、松尾幸作、次々と昨年のファイナリストが登場する中、ジュラシック木澤の登場で観客のどよめきが大きくなった。
まさに恐竜が現代に現れたかのような唸りが聞こえた。
次々と呼ばれていく中、前半最後の選手、ジャパンオープンを制した吉岡賢輝のマスキュラーに観客は興奮のるつぼと化した。
やはりファイナリストは何かが違う。この壁は越えられるのか。そんな不安と期待に満ち溢れた空気が漂っていた。
後半が始まり、4人目で大歓声が上がった。
須江正尋が復活の狼煙を上げたのだ。
ムササビのような広い背中に、観衆は待ってたよ!と言わんばかりの歓声で出迎えた。
復活といえばこの男の存在も忘れてはいけない。
須山翔太郎である。
彼は2017年、あの絶対王者鈴木雅をあと一歩まで追いつめた男だ。
2021年には最有力優勝候補に上がっていた。
結果はまさかの敗北だった。
2022年は欠場するのではないか。このままどうなるのであろうか。
そんな声もファンの間でもわずかながら囁かれていた。
その翔太郎がとんでもない肉体を搭載して現れた時にはファンは涙を流したであろう。
若き日の須山翔太郎を彷彿とさせる丸々とした肉体を大阪の地に降り注いだのだ。
そしてBGMが切れかかった時、最後の選手の名がコールされた。
しまだあぁー、けいたあぁー!!
観客はうおおー!!と唸りを上げた。
いつもコンディションに定評のある彼が、斜め上をいく驚愕のコンディションで登場したのだ。
これでファイナリストを含めた20人が顔を揃えた。
しかし、我々はこの後想像を絶する展開を目の当たりにすることとなる。
次回へ続く
コメント